2012年12・1月号


ジョニ・ウェルズさん



イラストレーター?
アニメーション作家?
人形遣いに物書き?
ジョニ・ウェルズとは一体何者
なのか。
疑問を解くべく、色々とお伺い
してきました。





人生が変わった

1975年、3週間の日本への旅に
カナダ中から30数人が選ばれて、
初めて日本に来た。
旅の最後が佐渡で、着いた時には
皆疲れていた。
その夜渡された次の日の予定が
8時間のバスツアー!
金山に宿根木、お風呂みたいな
ボートに乗り、ドラム打ってる若い
人達を観に行く。
皆、ここが最後だからゆっくりしたい、
明日のツアーはやめようって言い
出した。でも、僕も含めて何人かが
「これはまずいな。」と。
日本に来る前に、お前たちはカナダの
代表だから恥をかかせるな、といわれ
たんですよ。だから僕は仕方ないから
無理して行くことにした。
行ってみたら、この3週間の中で一番
印象的な一日になった。
人生それで変わったんだよね。


イメージ通りの日本だった

宿根木はもの凄く素朴で、昔の日本
が残っているような感じだった。
道がまだ土のままでドロドロ。
黒澤の映画に入っているような感じ
だった。そして、太鼓のグループ(鬼
太鼓座)を観るために真野にある体育
館に行った。もう目の前でいきなり
津軽三味線が始まって。
「えー何これ!」
そしてその夜は、濱田守太郎先生が
文弥人形をやってくれた。
でも人形芝居よりも感動したのは、
文弥人形の歴史とかを英語で書いた、
ガリ版のちらしを彼が用意してくれた
こと。そして人形芝居が終ったら、
「じゃあ、お前らもやってみるか」と言わ
れたんですよ!その、「お前もやらんか」
っていうのにもの凄い感動したの。
佐渡は、僕が持っていた日本のイメージ
に近かったんだと思う。
最初は鬼太鼓座に入りたいと思ったん
だけど、団体生活はちょっとできないと
思った。でも佐渡に行きたい。あの文弥
人形は先生が熱心だし、手紙を書いた
んですよ。
そしたら、「来いっちゃ!」って言う。
当時は文弥人形をやる人が本当に少な
くて、濱田先生が一人で頑張ってたくらい。
それで、日本語のコースを取ってバイトして
お金を貯めて、佐渡に来たんですよ。


金魚が惚れた

14ヶ月間、毎日に人形の勉強。
先生に、お前カナダに帰ったら文弥人形
やってほしいと言われた。
そうしたら人形が必要でしょ?
彼はきっとくれるだろうから、自作で作った
方が良いと思った。
それで初めて木彫りを始めたんですよ。
この14ヶ月は、僕の人生の中で一番難し
い、だけど一番効果があった時かもしれ
ない。僕は佐渡でほとんど最初の外国
人だったから、もう金魚鉢に住んでるよう
な感じだった。
その点はしんどかった。一人暮らし、日本
語、人形に木彫り。
初めてやることばかりで、人間として凄く
成長した。それまで色んな物に興味は
あったんだけど、熱心な物はなかったね。
でも、佐渡に関して熱心になっちゃったの、
初恋みたいに。


人生の舞台を一カ所に

14ヶ月の後カナダに帰って、色んな仕事を
した。やってないのは医者くらい。
英語の先生、通訳・翻訳、ガードマン、
船の乗組員、日本の骨董品屋…。
鼓動のツアーも何度か一緒に回り、その
時にイタリアで智恵子と出会って結婚した。
結婚後はまず佐渡に来た。芸術家として
やってみようと、木彫りの看板を作ってた。
次はトロントに行って、イラストレーターと
して絵本を作った。
同時に夜間学校で、家具作りやカヌー作り
ステンドグラスた溶接を学んだ。
次は東京に行って、イラストを描いたりして
た。その時に、インターネットができたから、
フリーランスのイラストレーターとしてそろ
そろ佐渡に住めるかなと思った。
それまでいつも不満の理由を自分の居場
所のせいにしてきたけど、人生の舞台を
一カ所に決めちゃおうと思って佐渡に来た
んですよ。


参加できる文化

佐渡の不便さが僕にとっては凄く良い。
不便だから佐渡は独特の文化が残せるし
その中で色んな良い物が生まれてくる。
僕のポリシーは、なるべく安く百万長者の
暮らしをすること。
おいしワインは五百円までとか(笑)。
遊び上手な人には佐渡は最高の所だと思
う。それで僕は自分の遊びで茶室やアニ
メーションを作ったりしている。
茶室は友達の大工さんと一年ぐらいかけて
作った。一枚の板図を基にして釘を使わな
いでね。僕は自分で作れるレベルの物が
自分で持てる物と思ってる。
それで茶室の名前は「個乃庭堂(このてい
どう)」。
アニメーションは、人形、イラスト、音楽など
全ての要素が入ってるから面白い。
佐渡の文化は観る物じゃなくて参加する
物ですよね。
ちょっと祭りに寄ったら、「おージョンさん!
獅子人が足りないから入ってくれ!」と
言われて入ったらそのまま一日中で、
もうヘロヘロになるわけ(笑)
佐渡はお前もやらんかっていう文化。
もの凄いオープンで、参加させてくれるん
ですよね。僕はそこが物凄く好きなんだ
よね。



ジョニ・ウェルズ

1953年、カナダトロントに4人兄弟の末っ子
として生まれる。父は外科医、母は女優。
トロント大学卒。
アニメーション、イラスト、物書き、人形遣い
等、多方面に才能を発揮し、1995年より
東京の街を描いたイラストを読売新聞に
連載中。現在、妻智恵子さんと愛犬カイラ
ちゃんと畑野に住む。

  

佐渡情報

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