2013年10・11月号




ジャン-マルク&聡美ブリニョさん
フランスから佐渡へやって来た二人
目指すのは、佐渡の自然の恵みに溢れた
人間味のあるワイン作りです。


自然が生み出すワイン

とある民家の蔵。
壁際の棚には整然とワインの瓶が並ぶ。
栓が抜かれたグラスに注がれたのは
ナチュラルワイン。
向こう側が透けて見えるほどの薄い赤。
初めて経験するその味は、複雑ながら
山の緑のようにみずみずしい。
時間が経つにつれて赤い色は深みを増し、
香りも味もより豊かに。
ナチュラルワインとは、有機農法で栽培さ
れた葡萄のみを原料とし、醸造過程でも
添加物を一切使用せず、出来る限り
人間の手を加えずに作られた
「生きた」ワインのこと。
そんなナチュラルワイン作りを佐渡で始
めようとしているのが、ジャン−マルク・ブ
リニョさん、聡美ブリニョさん夫妻だ。


ワインが繋げた二人

二人が佐渡に移住してきたのは2012年
11月のこと。
それまでは15年間、フランス東部のジュラ
でナチュラルワイン作りに取り組んできた。
ジャン−マルクさんは幼少の頃から自然に
憧れ、船乗りかワイン職人になりたかった
という。
「自然はとても詩的。自然の中にいて耳を
澄ますと、我が身の小ささと自然との繋が
りを感じられます。」
日々の生活の中でささやかな楽しみを感じ
られる魔法のような瞬間を、自然、そしてワ
インの中に見出している。
話をするジャン−マルクさんの傍らで手際
よく料理を振舞ってくれる聡美さんは、
プロのフルート奏者の経歴を持つ。
ジャン−マルクさんが作るワインに惚れ込
み、ワイン作りの人生を共に歩むようにな
った。ワイン作りについて語る言葉には力
がこもる。


佐渡の自然に魅せられて

二人は、子供が生まれた事をきっかけに
日本への移住を考え始めたという。
「どこへ住もうかと考えていた時、知人から、
佐渡には豊かな自然とおいしい食べ物があ
ってワイナリーがないから絶対に良いよと薦
められ、調べてみたら本当に佐渡は面白く
良さそうだった。」
佐渡とジュラは年間降水量等の気象条件に
はほとんど差はないそうだ。
「佐渡の自然は本当にとても力強く、
何でもよく伸びておいしい物ができるから、
ワイン作りは絶対に面白い。
地質も多様なので、沢山の種類のワインが
出来ると思います。」


ナチュラルワインの味を佐渡に

今年は八品種の葡萄の苗を七百本ほど植え
た。初収穫まで三、四年。
佐渡産ワインの完成までは更に一年半から
二年かかる。
試みに山葡萄からワインができるか実験する
予定だ。葡萄栽培と平行してワインを小売し、
ナチュラルワインを紹介するバーレストラン
を経営している。
「ナチュラルワインのおいしさを知ってもらい、
他の一般的なワインとの違いを感じてもらい
たい。自分達が知っている事や文化を佐渡
に紹介できる場になれば。」
「場所も人も変わらなくても、佐渡で採れる
旬の野菜や果物、魚を出す事で変化を出し、
今日は何があるかちょっと寄ってみるか、
と思ってもらえるような店にしたいです。」






森で葡萄栽培を

「葡萄は元々、森の中の日陰にある樹木に
巻き付く植物だったので、佐渡ではそのよう
に育ててみるつもりです。
今でこそ一面葡萄畑という光景が見られる
けれど、それは本来の姿とは異なり、病気
が一気に広がる原因でもある。
山の中で森をそのまま使って、色んな木や
草、他の果樹等と共存させながら葡萄を栽
培したいんです。」
ヨーロッパの葡萄はかつて、根に寄生する
フィロキセラという虫により壊滅状態になり、
その後は耐性を持つアメリカ産の品種を台
木にして、従来の品種を接ぎ木する栽培法
が主流になっている。
しかし、ここ数年再びフィロキセラが見られる
ようになったという。
この先どのように被害を防ぐのか。
「自然はとても良く出来ていて、植物は子孫
を残すために新しい環境に順応してゆっくり
でも少しずつ変わっていく。
そこに答えがあるはずなので、是非種から
育ててみたい。
それは時間がかかるので誰も試してきませ
んでした。
自分の世代で何かが分かることはないかも
しれないけれど、次の世代のために誰かが
始めないとだめだから。」
佐渡が、未だかつてないワイン作りの
発信地になる日が来るかもしれない。


La Barque de Dionysos
(ラ バルク ドゥ ディオニゾス)
所在地:〒952-0318 佐渡市真野新町327-1
ウェブサイト:www.labarque.net
*営業日時等はウェブサイトでご確認ください。
*お問合せは080-8866-4070まで



  

佐渡情報

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