2014年6・7月号


仕事は遊び
遊びは仕事。
職業は生きること。

庭師 若林吉則さん





面白い方が良い

仲間と飲んで朝帰ったり、孫と遊んだりする
毎日。気の合う友達と未来を考えたり、
飲みながら話す機会が良いな。
飲んだ次の朝は、少しふわふわしてる時に
絵を書いたりして。
ん〜、仕事はしとらんなぁ(笑)。
生きとるのが仕事だと思うしねぇ、うん。
生きるだけで十分な仕事なんだよな。
時間が財産。
急ぎすぎてもだめだし、ゆっくりすぎても
だめ。ちょうどが一番。


造園と絵

高校を卒業した頃は、日本の経済が伸びて
いったからね。東京へ出て、請負仕事をどん
どんやった。
その頃は求人が随分あって、造園の仕事と
出会った。
東京の調布にある森田園に弟子入りして、
住み込みで仕事したんだよ。
良い親方に付いてね。
小学校の先生、高校の研修で出会った親方、
俺は良い出会いに恵まれてる。
随分ついてるなぁと思ってね。
森田園は灯篭も売ってたから、暇があると
スケッチしてた。
庭に灯篭を入れたらどうだって言っても、
普通の人は写真見せてもピンと来ない。
それよりも、庭に灯篭や石の大きさを入
れて絵に描いた方が早いわけよ。
それからずっと書いていて、そのうちにジョン
(ジョニ・ウェルズさん
本誌2012年12・1月号特集記事)
と知り合った。水彩画の書き方を教わって、
お前個展やったらどうだって言われてね。
十年前かな、一回新町でやったんだよ。


理想の庭

庭の仕事は、お客さんの要望を聞きながら
何とかこっちのペースに持って行くっ
つうかな。家族構成で庭っていうのは
決まる。家と人間が合ってないと庭じゃ
ないよな。
それと俺はいつも思うんだけどよ、庭は
勉強になる場所でなけりゃだめなんだよ。
格好良いんじゃなくて、ここは涼しい、
緑光が見える、それと、住みやすい
っつうかね。
その辺を説明するには、やっぱり自然
から習うことが一番多いんだよな。
自然はもう神様さ。
こっからそこまで行くのんに、まっすぐの
道をコンクリートで作った方が早いんだ
けども、俺はそこに行くのんにね、
百歩ぐらいで行きたい。
それは退屈しない歩き方な。
段になってみたり、下がってみたり、横に腰
かけががあって腰かけてみたり。
外側から自分の家も見るととか。
たまには家族がおって、ここで煙草一服吸
いながら、ここにおると孫が見えるとか。
飽きない庭だな。


自然がなんでも教えてくれる

造園の仕事で良い所は、木の力がわかる
ことだな。言っても分かる人と分からない人
がいるんだけも、木が木であると思って
ちゃだめなんだ。
「切らせてくれ」という気持ちがないと
いけない。
以前、旧家に立派な槙の木があってね。
切る時にはいつもおまじないをするんだ
けも、その時は時間がなくて省いたんだ。
そうしたら、枝にひっかかって足が動かなく
なったんだよ。
それで次の日に塩を持って、悪かったなぁと
言いに行ったよ。
それから、これは聞いた話しだけも、
どこかのダムで山が水没する時、時期が秋
なのに、周囲の桜が一斉に咲いたって。
危惧を感じて最後の力をふり絞ってさい
たんだよ。






遊びのある島

佐渡は余りにも急激に壊されてしまった。
昔、越しの長浜に佐渡で一番古い、大きな
榎の木があってね。泳ぎに行った時に
見たら、切ってしまう目印が付いてた。
なんとかしようとしたんだけも、あっと言う
間に切られてしまった。
木も山も、皆生きもんさ。
そういうのを皆に分かってほしい。
例えば天然杉を見に行くのでも、山を壊して
道を広げるんじゃなくて、皆歩いて行って、
そして天然杉がよく見える所にベンチを置
いて休んでもらうようにすれば良いと思う。
庭を作る時は、次来た時にまたゆっくり見
たいなぁと思える庭を作りたいと思ってる。
佐渡もそう。ただ綺麗だったね、で終わる
んじゃなく、また来てゆっくり見たいと思える、
味が残るような島でないといけないと思う。
今ある自然を大切に残すことの方が難しい
けも、大事なんじゃないかなぁ。
自然を壊すことなしに、もう少し遊びの
ある島作らんかや。





若林さんによる遊び場
    「茶屋四分一(しぶいち)」案内


「ケヤキの流木で造った風籠門をくぐると、
一昔前に戻った雰囲気。
立派な庭ではないが、小鳥が来たり
メダカがいたりする自然風の流れ。
その中に、「茶屋四分一」がある。
その奥にはもらった材料だけで作った
毛呂多庵(もろたあん)。
黒柴犬のコロ、一羽になったニワトリ、カメ。
なにしろ変人の家だ。」

佐渡市八幡1896-7(不定休)


  

佐渡情報

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