2015年10・11月号


竹刀職人
佐州住清正(さしゅうじゅうきよまさ)
高津俊和さん






門前小僧の竹刀作り

私で二代目です。十六歳からやってます。
父がやっとって手伝わされた。
遊び半分、門前の小僧のような感じですよ。
職人になる決意をしたのは中学を出る時。
他にも興味があることはあったんだけどね。
父が早く亡くなったもんだから、やっぱり、
父のお得意さんが困って、何とかしてくれ
って言われるから。それで、しようがねえ、
やってみようかと。
ほとんど独学みたいなもんです。
お客さんが来てこうしてやってくれ、ああして
くれって言われて段々覚えてきますからね。
色々やってみて、竹刀ってこんなもんかっつ
うことを覚えた。
別に職人に憧れたとかそんな格好良いもん
じゃなくてさ、要は、生活のための生業で
すよ。今六十六だから、五十年、竹刀を作
ってます。後継ぎはいないですよ。こうい
う仕事じゃもういないですよ。弟子にして
くれって来たらするけど、食っていけるか
どうか分からんよっつうことになるよね。
それでも良ければ教えてあげるけど。
自分で最後になるでしょうね。
しようがないんですよ。



竹刀ができるまで

竹を切ってくるのは九月の半ば過ぎぐらいか
な。竹刀にはやっぱり真竹です。秋口になっ
て筍が終わって、竹が一番栄養とった時点で
ぱっと切ってやるのが一番。良い竹を見極め
る方法は、長年の経験しかないよね。竹の色
とか笹のつき具合とか。集めてきて十一月ぐ
らいに割って、大きい釜でぼんぼん火を炊い
て、蓋をして蒸し焼きにし、油抜きを終わら
せる。その後、半年ぐらい寝かせて乾燥させ、
それから作るんですよ。
一日に三、四本できます。
長さだけ測って、あとは勘ですね。
ある程度数を持っておいて、注文が来るとそ
れに合わせたやつを引っ張り出してきて、銘
を入れて完成させる。
道具は他の職人と比べても遥かに少ないで
すね。竹を矯めるカシで作った道具、竹用の
一枚刃の鉋、みんな特殊なんで、大体注文
して作るか自分で作るしかないんですよ。
だから、木の仕事もやるんですよ。





佐渡の竹は良い竹だ

今でこそ山へ入るけど、以前は竹はわざわざ
採りにいかなくてもね、竹細工というのがあっ
たんですよ。そこへ行って自分のいる分だけ
分けてもらってきたんです。
今はもうそんなことないでしょう。
佐渡の竹は良いって言うけど、昔と比べてや
っぱり材質が悪くなってる。
取ってきても半分ぐらいダメやね。
竹細工とかが一切出なくなったからさ、結局
竹”やぶ”でしょう。
竹林じゃねぇわけだ。
もう、人間も入るのもやっとこせというぐらい
な状態でしょう。
昔は、竹を切って使うサイクルがあったけど、
今は全然ねえもん。風にも当たらない、それ
から日にも当たらないでしょう。
だから、しなりがなくて途中からぱかっと折れ
てしまう。とは言っても、一時佐渡の竹がなく
なってさ、他から取ってみたけどやっぱりダメ
だね。竹の良し悪しは持ってきて乾燥してみ
ても分かるし、矯めりゃ一番分かりますよ。
良い竹はいくら曲げたって折れないし傷も出
ない。





姿の良い竹刀を

剣道はちょこっとやったんですけどね。
家事消費というのはしないように(笑)。
あんまりやると、自分の好みで作ってしまう
からさ。竹刀で大切なのはバランスもあるし、
基本は材質、耐久性でしょうね。
でも、良し悪しの判断は使う人それぞれなん
ですよ。だから、色んな竹刀があって良いわ
けです。新素材の竹刀も出たりしてるけど、
竹で作ったものは節が力を吸収してくれる。
うまいことできてるんですよ。
だから、竹刀はやっぱり竹じゃないとだめだ
ちゅうことだ。
ずっと今でも一人前やと思ってないよ。
お客さんは、良いですねって言ってくれるか
も分からんけど、自分が満足できる製品って
なかなかできないですよ。
姿の良さが一番大事ですね。
昔の竹刀ってね、ごろっとした感じのが多か
ったんです。そういうのを目標にしとるんだけ
どね。自信作もあったんだけど、ある店に飾っ
ておいたらどうしても売ってくれっていうお客さ
んがいて、売っちゃった。
取っといたって話にならんしさ、やっぱり使わ
にゃ価値ないんだから。
今後の目標は丁寧にぽつぽつ作っていく。




佐州住清正
新潟県佐渡市羽吉509
0259-27-3974
http://www11.plala.or.jp/chihiro-co/

  

佐渡情報

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