2011年6・7月号




































げんまる つれづれ 綴り



田植えの後の少し成長した稲が、
梅雨のにおいをふくんだ風にゆれている。
いよいようっとおしい雨の季節である。

この季節が来るたび子供の頃見た
ホタルの群舞を思い出す。
家の周りの田んぼにホタルが現れると、
父が皆を呼び家族全員でホタルを見た
ものだ。
蛙の大きな鳴き声の中ホタルが宙を舞う。
真っ暗な田んぼは薄気味悪く怖かったが、
ホタルの淡い光の舞はとても綺麗で
今も忘れられない。

ひと昔前までホタルは時期が来れば
身近で見ることができる梅雨の風物詩だった。
ところが今ではその姿をそう簡単に目にする
ことができなくなった。
耕地整理や農薬使用等によりホタルの生育
する環境が大きく変化したためである。
綺麗な水や生い茂る草などに恵まれた所に
しか生息しないホタルは清流のシンボルで
あり、環境のバロメーターでもある。
我が家の田んぼでは子供の頃見たホタルの
群舞はもう見られなくなった。
身近で見られなくなったことは寂しいけれど、
佐渡にはまだまだ清流が多く残っている。
ちょいと足を延ばせばホタルの舞い飛ぶ姿
を今でも見ることができる。
そんな環境があることは幸せなことと思う。

梅雨の一時の晴れ間に
ホタルの光を楽しむのは昔から多くの
日本人が味わってきた季節感である。
暗闇に画かれるホタルの淡い一条の光。
一抹のわびしさがつきまとう一方で、
暗闇であろうとなんであろうと懸命に
夜空を乱舞する姿に日本人の誰もが
心惹かれてきた。

今年はそんなホタルの姿に三月の未曾有
の大震災から懸命に立ち上がろうとしてい
る人達を思う。
一つの光も重なり合い交われば大きな
優しい光となる。
「頑張ろうニッポン!今こそ心ひとつにして」
一日でも早い復興をただ願うばかりである。





  

佐渡情報

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