2012年6・7月号


























げんまる つれづれ 綴り





田の緑が日に日に茂り、吹く風の中に
夏を感じさせてくるようになった。
とはいえ本格的な夏はもう少し先、
その前に憂うつな梅雨がやってくる。
ジメジメ、ベトベト …「あーー嫌だっ!」
湿度の上昇とともに不快指数も急上昇。
おまけに食欲不振に陥る時期でもある。
そんな時期なのに妙に思い出してしまう料理、
それが、ドジョウ汁である。
子供の頃、六月入梅以降になるとザルで蓋をした
青いバケツが家の勝手口付近にお決まりのように
置かれていた。覗いてみれば生け捕りされた
ドジョウがウヨウヨしている。逃げたいのか
苦しいのか時々キュっと鳴いたりする。
一匹捕まえて顔をみればなんとも愛嬌のある顔♪
バケツにかじり付き、飽きるまで眺めたものだ。
そんなドジョウを酒で酔わせて眠らせ(?)
活きたまま火にかけて煮たドジョウ汁になって
食卓に出てきた時の衝撃は子供心に大きかった。
ドジョウと一緒に煮たジャガイモ、ネギ、
ゴボウにタケノコ、焼き豆腐、そして素麺は
最高に美味かったが肝心のドジョウはというと
ヤッパリ … 食べられなかった。
当時は無知だったのでドジョウを食べるのは
もしかしたらウチだけなのか?と思っていたが、
ドジョウ汁は地域こそ限定されるが古くからある
れっきとした佐渡の郷土料理の一つである。
そもそもドジョウは昔から滋養強壮のある
身近な食材として日本各地で食べられてきた。
産卵期前の六〜七月が一番美味いといわれ、
夏バテには格好のスタミナ源になっていた。
その栄養価は極めて高い。今や夏のスタミナ源の
代表・ウナギと比較するとビタミンA、B2、D、
カルシウム・鉄分を多く含み、特にカルシウムは
ウナギの約十倍というから驚きである。
なるほど、具だけを食べドジョウ食べないと
「もったいねぇことするな!丈夫になれんぞ!」
と親父に怒られたような気がする。
そんな生活の身近にいたドジョウも
昨今では滅多にお目にかかることのできない
生き物になってしまった。
ほ場整備や護岸整備で繁殖場所が減少し、
水田や川などでほとんど見かけなくなった。
ドジョウ汁もまた大人になってからというもの
ほとんど口にしたことがない。
幻の味になってしまうのかな、と一抹の寂しさも
感じつつ … 今年もまた梅雨がやってくる。



  

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