2013年4・5月号



























げんまる つれづれ 綴り


新緑眩しい五月の空に
鯉のぼりが泳ぎ、あちらこちらで
田植えの風景がひろがり始めると
かならず思い出す懐かしいおやつがある。
この時期にしか作らなかった
バァさん手作りのマキ、である。
ちょうど端午の節句時であり、
忙しい田植えの合間をみて、それこそ
雨休みならもうけものとばかりに
せっせとこしらえていたのを思い出す。
沢山作って田植えの一服休みのお茶うけに
出したり、遠方にいる息子や娘にも
米やらの荷物とともに送っていた。
もちろん農繁期の留守宅に学校から帰る
我々孫たちのおやつでもあった。

マキとはチマキのことだが、
海を隔てた佐渡のチマキはちと独特で、
土地によって作り方、巻き方、さらには
呼び方までも違う。
バァさんのマキは笹で包みスゲで
縛ったササマキと呼ばれるものだった。
一見すると越後名物・笹団子なのだが
中身はまるで似て非なるもの!
笹団子はアンコが入ったヨモギの団子だが、
マキは米の粉を捏ねただけの薄茶色がかった
もの。形も上が太く下が細いヘンな三角形。
中身はアンコがあったりなかったりした。
アンコのないマキはなんともいえない優しい
甘みがありそれはそれで味わいがあった。
佐渡の桃の節句に欠かせないシンコに
近いような感じ、か。
最近になって知ったことだが、
親父らの頃は干柿入りもあったという。
昔は砂糖が貴重だっただろうから
アンコの代用だったのだろう。が、
食べたことがないからコメントのしようも
ないのだが、団子と干柿の食感が果たして
どうなのか?とおもわず苦笑いした。

バァさんが他界して三十年経つ。
今や頂き物でしか味わう事の出来ない
懐かしい味をしみじみ
思い出す季節が今年もやってくる。



  

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