げんまる つれづれ 綴り


白い雪に覆われた金北山が、
春になり雪が融けてくる頃になると、
国仲の農家では、春にしか御目にかかれない
とんちぼと同じくらい名の知れた猿の出現を
今か今かと待ち望む。

 ・・・あん?佐渡で猿だって?
 しかも春限定?スイーツじゃあるまいし。
 真野公園の猿んことか?・・・

答えはノー。佐渡に野生の猿はいない。
春の訪れとともに、金北山に積もった雪が
融けて、融けた模様が、猿に見え
種まきをしているように見えることから、
「種まき猿」と呼ばれている。
昔から、佐渡ではこの種まき猿が現れると
農作業をはじめる合図とされてきた。
・・・スイーツでも公園の猿でもない。
雪形の、猿のこと、である。

天気予報の技術が進んでいなかった時代、
農家の人達は、山にできる残雪模様・
雪形の見え方や融け具合を見て、田植え、
種まき、といった農作業の目安にしていた。
どの時期にどんな作業をするかの暦が
ある程度決まっていても、年によって
寒暖の違いがあるから、雪形から暦の
微修正をして、より農作業に適した時期を
探ることができる事を先人達は、長い経験
から学び、土地の人々に口伝されてきた。
今では農業も機械化され、インターネットの
普及により情報が豊かになり、また気象予報
も正確になって雪形を農事暦として活用する
ことはなくなってきているのだろうが、
先人の知恵の賜物であることを思うと
感慨深くなる。ちなみに種まき猿は
佐渡の民話として次の様に語り継がれている。
 
むかし大雪の年、腹をすかした山猿が里へ
下りてきて村人に一飯の施しを受けた。
その恩返しに毎年種まきの時期を教えると
約束。ある朝金北山に大きな猿が種をまく
形で現れた。それを見て苗代に種をまいた
ところ豊作に恵まれた。それからこの地方
では毎年種まき猿に合わせて種をまくよう
になった。とさ・・・

種まき猿が、金北の白い背景に黒く浮き出る
春は、近い。







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