2016年2・3月号


























げんまる つれづれ 綴り


年が明け、小正月も過ぎ、早くも大寒である。
一年で最も寒い時季、吐く息はまだまだ白い。
春よ、来い!はーやく来い!
暖かい春がホントに待ち遠しい。
そんな春を思うとき、数年前、とある山林で
出会ったスプリングエフェメラルを思い出す。
早春の散策の折、たまたま入った林の斜面に
雪割草やカタクリの花が群れをなして
生き生きと鮮やかに見事に咲いていたのだ。
厳しい冬を越えて咲く花のなんと美しいこと。
可憐で清楚、そして強さをも感じるその姿に
感動!電光石火の如く心奪われてしまった。
あれから何年もたつのに、その眩いばかりの
春の妖精たちの姿は今なお色褪せない。
スプリングエフェメラルとは、
春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、
あとは地下で過ごす一連の草花の総称である。
落葉広葉樹林では、夏に繁っていた樹木も
冬になる頃にはすっかり葉を落とす。
冬が過ぎ、寒さが和らぎ始める早春から春に
かけての森や林の中は、驚くほど日差しが
よく通り明るい。 雪解けとも重なるこの時期、
落葉に覆われた林では、春を告げる植物達が
暖かい春の日差しを感じながら、落葉の下で
静かに美しい花を咲かせる準備をしている。
雪がすっかり消えたころ樹林下では、束の間の
春を謳歌するが如く、花を咲かせるだけの力を
蓄えた植物たちは、いっせいに蕾を出すと瞬く
間に可憐な花を咲かせ、そこは華やかな森の
楽園となる。しかし、儚くもその花もすぐに
終わり、葉だけの姿になる。さらに、その葉も
夏が本格的になる頃には枯れ、地上からその
痕跡を消す。そして、次の年の春まで一年の
大半を地下茎や球根だけの姿で地中で過ごす。
こうしたライフサイクルが故にスプリング・
エフェメラル(儚い、短命、束の間の意)と
呼ばれるのだろう。
とはいえ、日本ではこれら一連の草花を多くの
日本人が「春の妖精」と呼ぶ。直訳とは違う
春の妖精とは、なんとも日本らしい言葉である。
実に情緒的で心に響く。桜にも似て言葉に
短命の美を感じるのは日本人独特の感性なの
だろう。
冬空の下、春の妖精たちは咲き誇る春の日を
待ち侘びている。春よ!来い!



  

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