2020年6・7月号
ユーモア満載♪のろま人形
ピーヤル ルル ピーヤル ルル ルウル
ルルル・・・・・・
デコ デンデコ デデン デコデコ デコ
デンデコ・・・・・
下の長者:ぬらり〜 ぬウーと東西〜、
さアて、皆様どなた様もようこそ
お出でなさいました。
さアて、わしは皆様も知っての通り
下ン長のご隠居様という者でござり
ます。わしは、金持ちでありまして
田畑山林まぐさ場は言うに及ばず。
金が沢山で沢山でムエハタカッテ置
きどころがねエ。そこで金ばかり貯
めて見たところで何にもならん。
なんか一つ名残りになるもんをこし
ろううておきてーと思うた。しかも
どこにでもあるものでねーもんとし
て生地蔵さんが良いと思うてのー。
カカ(女房)と相談してみようと思
う。カカやァ、カカ、カカやァ。
お 花:ハイ、おやさん(妻が夫を呼ぶ詞)
なんでござんす?
ようまァ、カカ、カカという人で
ごんすのう。
下の長者:いくら歳が寄ってもカカは恋しい
もんどーサァ。
(お花は、下の長者が生地蔵を買いに
旅に出ることに合意)
下の長者:これから上方へ仕入れに行って来る
が、留守の間がしんぺ(心配)での
ー。
お 花:何を今更、しんぺいせんならんこと
あるっちゃ?
下の長者:留守中、次の二つの事は、くれぐれ
も頼むぞ。毎度ゆーとる事じゃが。
一に、火の用心
お 花:一に、火の用心。
下の長者:二に、かのこと。
お 花:二に、かのこと。
そんげん事、もう何十回も聞かされ
知っとる。
そんな、よんどこねーこと、何度も
言わんでくれっちゃ。辺りのもんや
お客さんが皆、耳すませ想像たくま
しーして聞ーとるねかっちゃ。
下の長者:わしが居らんたびに、後からんなっ
ていろんな噂が立つすけー言うとる
んがさ。家ん中に煙が立っておるの
ん放置しとくもん、おるかさー。
お 花:見かけによらん猜疑心が強よーて嫉
妬深けーお人。この歳になってもの
ー。なんもしんぺいせんでいっちゃ。
それより早う無事に帰ってくらん
しや。
のろま人形の代表的な演目「生地蔵」の最初
の一幕である。すでにニヤニヤである(笑)。
古い佐渡の方言を巧に織り交ぜ、時折アドリブ
も入るといった自由で軽妙な掛け合いが魅力。
演目は「そば畑」「五輪仏」「木の助座談」等
がある。どの話も最後は、主人公の木の助が
失敗し、観客の笑いを誘って幕が閉じる。
一九七七年には重要無形民俗文化財にも指
定されている。
一度観たら忘れられない「のろま人形」。
今、世の中笑えない事態になっているが
こんな時だからこそ佐渡ならではの「のろま
人形」の笑いが恋しい。
一日も早く終息すること願うばかりだ。
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