2017年8・9月号


国指定重要無形民俗文化財 
佐渡文弥人形芝居

常磐座座長
和田登志江さん






何も知らずに始まった


昭和六十三年だったか、たまたま同じ
会社(新潟交通)で付き合いのあった、
当時の座長だった本間照代さんに「遊
びに来いや」と言われて行ったら、「大
会があって出るんだし、さあ、人形持
って」と、そのままただ人形持って出た
のがきっかけです。
文弥があることは知っていたけれど、
わざわざ行って見るっていうところまで
しないっていうのは、まあ私だけでなく
佐渡人には多いですよね(笑)。
高校出て退職するまで事務屋一本や
りで、文弥のことは何も知らなかったけ
れど、どこか性に合っていたんですか
ねえ。先輩三人と新人二人で、皆が一
つになって本当に一所懸命でした。
平成元年に濱田守太郎先生(注)から、
そろそろ一本立ちしても良いとのお墨
付きをいただき、常盤座の旗揚げ公
演を行いました。
一昨年に本間座長が亡くなって、始め
からのメンバーは三人になってしまい
ました。私は断ったんだけども、皆で
話し合って自分が座長になりました。
責任者として舞台以外の取りまとめや
公演の交渉もやらなきゃいけなくて、
何やってんだかと思うくらい忙しい。


様々な取り組み


毎年六月の第二土曜日に「女達のここ
ろみ」ということで公演を行っていて、今
年で十三回目を数えました。
始めはお能と文弥人形という事でした
が、今は鷺流狂言や他の演目を加えて
頑張っています。



八月十五日には、帰省した人に楽しん
でもらおうと、金井能楽堂で鬼太鼓・お
けさ・大黒舞・文弥人形と、佐渡の芸能
盛りだくさんのイベントを行っています。
両津の七夕まつり、十月の紅葉山まつ
りにも毎年参加させてもらっています。
他にエージェントが間に入ったものを入
れて、年間二十ぐらい公演があります。
公演以外では小中学校に教えに行った
り、修学旅行で新潟から来た小学生に
、観るだけではなく体験もしてもらったり
しています。
今の子供たちはチャンバラなんかしな
いから、刀の持ち方が分からないんで
すよね。でも刀をあれこれ動かしてい
て、それが一番楽しいみたい(笑)。
声をかけていただいて、ボランティアで
地域の茶の間にも行っています。
おばあちゃん達が、昔祭りで見た事が
あると言って喜んでくれます。
声をかけていただければどこへでも伺
います。




伝え残したい


やり始めると奥が深いし楽しくもありま
すが、とっつきにくいっていうのがあっ
て、やってくれる人が減って今は本当に
危機的な状況です。
現在メンバーは五十代から七十代まで
の七名で、結成したのが三十年前です
から、当時は若くて元気でしたが、今は
少しガタがきています。
あの頃持てた荷物も今は大変で(笑)。
文弥人形の台本は十七ぐらいあります。
若手のメンバーには半分ほどしか教え
ていないんですよ。一年に一つずつとし
て、まだまだ先が見えません。
そう考えると足元に火が付いて、
もう・・・・・。
大きなことを考えるのではなくて、文弥
人形を何とかを残したいと思ってるんで
すよね。習ってきたことを絶やさないよう
に伝えていきたいっていうのが一番の気
持ちなんです。
若手が育って、いつでも代われる状態に
しなければと思っています。
興味がある方は年齢も性別も問いませ
んので、いつ来てもらって構いません。
「入りましょう」ではなく「やってみましょう」
っていう感じで、懇切丁寧に教えます。



(注)濱田守太郎(1900〜1998)

七歳の頃から佐渡に伝わる国の重要無
形民俗文化財、佐渡文弥人形芝居を習
い始め、二十二歳で人形遣いになる。
昭和九年に繁栄座の座長となり島内各
地を巡る。戦後は米国・フランス・イ
タリア・オランダ・中国と多くの海外
公演をこなした。晩年は佐渡島内の人
形座・交栄座の座長として後継者の育
成にあたった。





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