2018年12・1月号


写真家

三島 宏之さん






就職はしなかった


東京生まれで千葉県佐倉育ちです。
近所の高校を出てから、都内の職業訓練校に
二年通って、自動車整備の資格も取りましたが
就職はしませんでした。



東京のトムソーヤ


就職より当時は素晴らしい仲間に囲まれていた
ことが大きくて、二十代後半までは東京でバイト
をしながら夜な夜な集まっては「何かやろう」と
盛り上がっていました。
地元の幼なじみや、職業訓練校の仲間と自転車
の旅をしたり、フリークライミングやスノーボード
など基本的には野外活動中心でした。
トムソーヤに憧れてペットボトルで筏を作り、海を
目指して利根川を百キロほど下る、なんてことも
やりました(笑)。
三十に近づいた頃、世間に対し自分は何者かと
いうことが分らないとそれ以上階段を上がれな
いと思い、ちょっと縁があった京都に移りました。



京都からイギリスへ

当時は景気が悪く特に希望する職種もなかった
せいで、京都での就職は中々決まりませんでし
た。それでも写真の経験があったので半年後に
観光業界のカメラマンになり、五年ほどやってい
ました。
自分で展示会などもしましたが、そういう時に英
語ができればもっと発信できるのではと思い、母
が移住しているイギリスに渡りました。
でも英語は難しくて、中一レベルが高三レベル
になった感じかなぁ(笑)。



大阪の長屋


八ヶ月ほどで帰国して千葉に戻りましたが、オラ
ンダに留学していたこの人(奥さん)も丁度帰国し
ていたので、大阪で一緒に住む事になりました。
大阪は海に近い雰囲気があって懐かしいような
感じがあったのと、大阪の人のコミュニケーショ
ンの取り方に興味がありました。
ここでは少し自由な発想で生きてみようと、写真
やアルバイトをしながら古い長屋の一角を借り、
皆が気楽に集まれるスペースを作りました。
暮らしにまつわることを楽しめる場になれば良い
なと、例えば味噌作りや子育てのことを話す会、
持ち寄り晩ごはん会などを開きました。






佐渡へ


佐渡には彼女(奥さん)の友人が真野に移住して
いて、2010年にそこを訪ねたのが最初です。
佐渡の人が親切で古い家が残っていてそれがま
た綺麗で、手間をかけた昔の生活が続いていて
良いところだなと思いました。
大阪に居て自然に憧れるようになり、自分も精神
失調を煩い、それなら環境を変えようと2015年に
移住しました。
家も知人の紹介で西三川の空家を借り、柿の摘
果仕事も紹介してもらって、島での暮らしが始ま
りました。
人付き合いのことなど心配もありましたが、沢山
の方に声をかけてもらい、今はりんご園や米農
家さんなど、あちこちの手伝いをしながら写真の
仕事もしています。
冬は真野の方に教えていただき竹籠を作ってい
ます。佐渡の人も自然も本当に素晴らしく、精神
的にも落ち着いてきました。







美術の力で


二十代のの東京、そして京都でも大阪でも、い
つも仲間と出会い支えられてきました。
そしてここでもまた野菜や魚をいただいたり仕事
をさせてもらったりして、近所の方をはじめ沢山
の人にお世話になりっぱなしです。
そこでぼくらは何をお返しできるんだろうとよく思
います。
旧西三川小学校での「お花見コンサート」を提案
したのはそんな気持ちもありました。
二回目の今年は「お、またやってくれるのか」と言
われて嬉しかったです。
カミさんが学生時代に美術を学んだこともあるの
で、この先地元で美術館みたいなことができたら
良いなと思っています。
といっても美術作品を鑑賞するだけの場所ではな
く、美術の面白さや力を使って、島の人も外の人
も楽しく集まって、皆が笑顔になれるようなことが
できればと。
美術って原始的な暮らしの中で壁画があったり踊
りがあったりと、もうすでに生まれていたと思うん
です。そんな美術のプリミティブな力で、誰もが笑
顔になれるようなことができたら良いなと思って
います。






  

佐渡情報

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