2018年2・3号



建具師・指物師
松本 利彦さん






八掛師の一言


昭和31年の佐渡産まれ佐渡育ちで、島から出た
ことはないなあ。
ここは親父が初代で俺が2代目。
子供は俺一人だったから、可愛がられてもおった
けど期待もされていてね。
高校出て東京に行って大学にでも行きてぇなあと
思ってたけど、お袋が許してくれなかった。
でね、その決め方が酷いんですよ。
八幡に居た「ぶかぶかさん」っていう八掛師(占い
師)が「この子を東京に出したら帰って来やせん」
って言ったって(笑)。
そんなん当たるかなあと(笑)。


小学校3年の頃から穴あけとか、襖に使う釘の
頭潰しとかしとったね。
中学ぐらいになると積み込みから建て付けの手
伝い。子供の頃は50軒ぐらい建具屋があって、
その地域地域でやっていた。
今は車だけど、その頃はリアカーとかだったから
遠くまで行くなんていうことはなくて建具屋の数は
多かったなぁ。

ずっと最初から親父と一緒にやっていて、親父が
亡くなる10年前ぐらいから経営に乗り出して、借
金も整理して覚悟を決めました。



建具


建具っていうのは障子、襖、板戸なんかですが、
まずは現場での寸法取りから始まります。
材料は、例えば杉だったら地物の安いものから
秋田杉まであって、予算や注文に見合った材料
を選んで加工して作ります。
でもここは俺が頑張って秋田杉を使いたいなっ
ていう現場もあって、そこの判断は俺がします
けどね。

昔は建具の寸法には高さ五尺八寸なんていう
決まりがあった。最近は六尺とか六尺六寸とか、
それがもう外れてしまってね。
まぁ、普及品を作るのはあまり苦労しないけど、
変わった注文もあってね。
面白いけど苦労もします。
建具と言っても襖や障子だけでなく、引き出し
や箪笥や米びつなんかも頼まれれば作ります。
自分では指物師っていう気持ちが強いです。



指物


最初に箪笥を作ったのは25年ほど前かな。
ある家から嫁入り道具に衣装箪笥が欲しいと
頼まれ、たまたま自宅用に使う大きなケヤキ板
があったので、それを前板にして作ったんです。
箪笥と建具は全然違うけど、親父は箪笥屋で
修行してきっちり基本を習っていたから色々聞
いて作りました。



船箪笥はウチの親父が材を集めるのが好きで、
俺もそうですが木を山買いしていて欅が集まっ
てたんです。
それで注文があった訳じゃないけど、何か欅を
使うものをと思ってね。


船箪笥は、周りは欅で中の引き出しが桐なんで
す。その時は古い金具を使ったけど、親父とお
袋が東北を回って、それからは一流の金具を
仕入れてます。
最初は小木に行ったりしてずいぶん調べました。
実物はもちろん、苦労して資料を借りてきて図
面や写真も沢山見ました。
ウチらは字なんて読まないでも写真見れば分り
ます。
船箪笥は昔は金庫だったので、中の「隠し箱」
は複雑なものが多かったけど、今は使い勝手
を良くするのに自分で考えた簡単なものにして
います。材料は佐渡の欅です。
木目が細かくてきれいで、土のせいか木肌が
赤っぽい。
始めの頃はここに遊びに来た人が見本を買っ
て行ったりしてたけど、ホームページに載せる
ようになってから注文が増えました。



若き後継者


今のところ、建具は他にやってるところがあまり
ないんで何とかやってるけど、将来はあやしい
でしょう(笑)。
公共の仕事もやらせて貰っていますが、新築
も減ったし伝統文化がねえ。
動くお金は大きいのにあまり利益にもなってな
い。好きで色々な工作機械を揃えたるするから
ねぇ(笑)。
あちこち目が行って損することもあるけど、何
でも好奇心を持って勉強するのは大事かなぁ。

息子が後を継いでくれますが、彼には彼らしい
作品を作ってもらいたいなと思っています。
息子は漆塗りもするので、それを活かしたモノ
もできればと思っているようなんだけど、忙しい
んでその暇もない。
でもまあ現場でも何でも、やれることをやってお
けば道は開けるんじゃないかと思います。







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