2018年8・9月号



おけさ笠制作者
伊達幸子さん





戦前の東京で


大正十三年生まれの九十四歳です(笑)。
新穂の長畝で生まれました。

戦前に佐渡を出て、東京の麻布で洋裁を勉
強し、三越や伊勢丹に納める子供服を縫っ
てました。
働いて二年ぐらいだったか、東条英機首相が
「国家のために軍需工場で働くように」とラジオ
で呼びかけがありました。
それで徴用で知らない仕事にまわされるよりは
と、さっさと自分で蒲田の内外編物(ナイガイ株
式会社)に入りました。
海軍の軍足(靴下)を編んでいたのですが、
昭和二十年の四月十九日に空襲で焼け出さ
れ、四日後の二十二日には身一つで佐渡に
帰ってきました。
そしてその年の十二月二十五日に結婚して
畑野に来ました。



始めたのは五十過ぎ


おけさ笠を編み始めたのはいつからだったか
なぁ。五十過ぎてからだから四十年ぐらい前に
なるかなぁ。その頃の役場の企画課の細野さ
んていう人が六日町から習ってきてそれで
おけさ笠を作る募集があって教えてもらいまし
た。洋裁も編み物も好きでまあ器用な方な
ので、上手下手はともかく直ぐに覚えました。
その時は何人かおったけども、一つ作るとみ
んなは嫌んなって解散して(笑)。





最初が大事


材料はイグサだけど佐渡のはだめなの。
肥やしをやるからか、ずんぐりむっくりで小
さくて全然編めないの。それで九州の農協
から個人的に取ってます。
編むときはこうして、これ小さなレンガだけど、
これを乗せて重石にして、水で濡らしながら
編むと折れないし、乾けばしっかりする。
使うイグサは百グラムぐらい。
長さ八十センチぐらいに揃えて使います。
最初のとろこ(編み始めの中心部)が一番大
事で大変。こう、きれいに丸く編まないと上
手くいかない。
緑の青いところは自分で染め粉を使って染
めますが、赤い紐は呉服屋さんで着けて仕
上げでもらってます。
大きさは昔からの決まりがあるかどうか知
らないけど、大体これぐらい。
亡くなった父さん(夫)が頭も良くて本当に器
用で何でもできて(笑)、こういう丸い木型を
作ってくれてこれが本当に勝手が良いの(笑)。
子供用の別の小さいのもあります。









儲けようなんて


おみやげ屋さんには売らないで、個人と個人
で売ってます。
佐渡や新潟や大分にも売れました。
小木のたらい舟の人も使ってます。
昔、小さいのを編んで、中にあめ玉入れたの
を両津のお土産屋さん置いてもらったけど、
全然売れないの(笑)。
作れるのは一日に一個かなぁ。
畑や草取りもあるし。
値段は一つ二千五百円。
これで儲けようなんて汚いことは嫌い(笑)。
年金もあるし、お菓子くらい買えれば(笑)。
かぶる時は前後をまちがえたら駄目。
広げてかぶってる人がいるけど格好良くない。
もっと閉じてかぶらないと。
先日は二人の女性が習いにきてくれました。
まだあまり上手くないけれど、今度はいつ来
るのかなぁ。
佐渡で作っているのはもう一人おるような気
がするけれど、こんな面倒なこと誰もしないで
しょう。でも、本当に楽しいですよ(笑)。





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952-0213 佐渡市飯持247
0259-66-3227




  

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