2019年8・9月号



かやの実会代表
野口 菜々さん






外から見た佐渡


出身は赤泊の徳和です。
高校まで佐渡で、東京の女子大に進みました。
小さい頃から国際協力に興味があり、将来は
貧困問題などを解決できる仕事に就きたいと
思っていました。
私の入った大学はフィールドスタディで海外に
行ける制度があって、色々学びながら知見を
広げることができました。
それまでは、日本は経済的に恵まれているの
でもっと外国に支援するべきだと思っていたの
ですが、実際現地の人達を見ると経済的には
恵まれていないのに、人生を日々ゆったりと
生きていて、何だかとても楽しそうなんですよ
ね。帰国して夜遅く東京の電車に乗ると、周り
の人が疲れているのか皆うなだれていて、豊
かな国なのに心はどうなんだろうと思うと同時
に、外に出て初めて自分の生まれ故郷の掛
け替えのない素晴らしさを感じました。
大学では佐渡出身っていうと馬鹿にされるの
ではと思っていたのですが、ゼミの仲間が佐
渡に来て「こんなに自然が豊かで食べ物が美
味しい所で育ったんだね」と褒めてくれ、佐渡
の普通が外から見ると素晴らしいことなんだ
と大きな発見がありました。
島を出て、また東南アジアを何カ国か回って、
外からの視点で佐渡を見ることができたのは
とても良かったです。




平和は各家の食卓から


「世界平和は各家の食卓から」
という言葉があります。
就職活動をして面接も受けましたが、外を支
援する前に自分の地元の土台を固めなけれ
ば本末転倒だと思うようになりました。
そして決してお金では買うことのできない
「生まれ故郷」を大切にしたい、故郷のために
なる仕事がしたいという結論に達しました。
佐渡で働く場は限られています。
ならばいっそのこと自分で仕事を作ろうと考え
ました。
丁度その時に、地元の特産品であるかやの
実を加工販売している、笠木隆子さんを母
から紹介して貰いました。
笠木さんは有志の方々と「かやの実会」を立
ち上げてやっていらしたのですが皆ご高齢で
段々減り、一人になった笠木さんも身体が保
たないので事業を畳もうかという時でした。
「このかやの実で地元をもっと良くしたい」とい
うお話を聞いて、それならばぜひ事業を継が
せて下さいとお願いしました。
友人達は「頑張れ」と背中を押してくれました
が、「大学出て海外に行くんじゃなかったのか」
と、家族や地元の人達は大反対(笑)。
私にとって親孝行とは、親の想像を超えて成
長し、こういうことができるようになりました、
という姿を見て安心して貰うことではないかと
・・・・・。









手間のかかかる可愛い子


2017年に卒業して佐渡に戻り、笠木さんは体
調を崩されていたので、地域の方々に一から
教えていただき、会の代表を継いで個人事業
として始めました。
三年目を迎え、五種類の製品を作れるように
なりました。
「会」ではあるものの実質一人ですので忙しい
時にはアルバイトさんをお願いしますが、製造
から納品、事務作業まで自分でやっています。
実を採るのは九月から十月。
主に赤泊地区のものを使っています。
手順としては熟して落ちた実を採取し果肉を
腐らせて水で洗い、一週間ほど天日干しして
乾燥機にかけ殻を取ってローストします。
これで食べられる状態になるので加工味付
けとなります。
一連の作業は大変ですが「手間がかかる子
ほど可愛い」みたいになって、苦労とは思え
なくなりました。




身体も地域も活性化


かやの実はビタミンEが豊富で健康にも良く、
和風アーモンドみたいだと言われているので
焼き菓子なども考えています。
最近はパッケージのデザインを変えたことも
あってか若い人達からの評判も良く、あちこ
ちから応援して頂けるようになりました。
家族もそんな私を見てか今では応援してくれ
ています。
支えて下さる方々へ感謝の気持ちでいっぱ
いです。
これからは販路を島内だけでなく、島外や県
外にも広げ、かやの実を通して赤泊や佐渡
のことをもっと知ってもらい、地元の若い人達
に、こういう道もあるということを示せればと
思っています。
少しでもこの事業を大きくして次世代に繋い
でいく事ができたら地域のためにもなります
し、自分の人生にも何か意味があったのだ
なと思えます。
お世話になっている皆様へ、故郷の皆さまへ
少しでも恩返しができるようにこれからも頑張
っていきたいです。
何百年も故郷を見守り続けた「かや」と一緒
に仕事ができるのは、本当に幸せで光栄な
事だと思います。







お問い合わせ
かやの実会
〒952-0706
新潟県佐渡市徳和1371
090-5779-4803



  

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