2020年8・9月号





塚本こうじ屋十二代目
塚本 理一郎さん







卒論はスポーツ文化



今年で四十歳になります。
この両津で生まれ、小中高と両津の学校に
通い、大学は陸上競技の推薦で日本大学
の三島キャンパスに行きました。
専攻は国際関係学部でした。
陸上で入ったので、まあそんなに興味があ
った訳ではありませんが(笑)、最終的には
ヨーロッパ系のスポーツ文化について勉強
し、卒論は「ドイツと日本のスポーツ文化
の比較」といったものを書きました。




誇れる家業


話し好きだった父が環境問題に関心を持
っていて、私もその影響を受けていたので
しょう。
環境問題に興味が湧き、それならばドイツ
が良いだろうと、卒業後は東京で一年半ほ
どアルバイトをしてベルリンに行きました。
あちらでは主にドイツ語の勉強をしていまし
たが、少し年上のルームメイトが東ドイツ出
身で、彼の友人も東出身者が多かったため、
社会主義というものをぼんやりながら学べ
たというのが大きかったですね。
感化はされませんでしたが、皆んなが助け
合って生きるというところが、割と日本の田
舎の考えに近いなあと思いました。
また外国を実際に知ることで、それまであま
り興味がなかった江戸時代から続くウチの
家業が、すごく日本的で誇れるものだなと
感じるようになりました。
それも家に入るきっかけになったのかなと。
一年で帰国してからはお金もなくなったので、
とりあえず家の仕事は覚えなくてはと実家に
戻りました。
まあ家族だけでやっていて長男でもあるし、
ポジションとしてここからは抜けられない
だろうなと(笑)。
十五年前のことです。




麹作りは教育か


最初は材料や道具を運んだり配達とかの力
仕事が多かったですね。
一連の作業は、父が亡くなるまで一緒にやっ
ていたので覚えることができました。





麹や味噌の仕込みは九月から翌年の四月ま
でです。
それから夏まで道具の手入れなどのメンテナ
ンスです。
今(注)はちょっとのんびりできますね。
一番大変なのは麹室(こうじむろ)の温度管理
です。ずっと母がやっていたのですが、最近
任されるようになりました。
ウチは全てアナログなので温度計を見ながら
管理しています。
経験があれば大体の様子が分るようになるの
ですが、今はまだ何度も見に行く感じです。
麹は最初に熱を与えてあげると発酵が進んで
後は自分で熱を出せるようになりますが、
これは子育てや教育に近いものがあるなと思
ったりします。
ますは、最初が肝心で(笑)、途中の反抗期で
熱が上がり過ぎないように先を読んでコント
ロールしなければ上手くいきません。
出来上がった味噌や甘酒は子供も含めて家族
みんなで味見します。
やはりお客様に喜んで頂けるのが一番嬉しい
です。

(注)六月中旬に取材




時代とともに





伝統も大事ですが、やはりこれからは時代
に合わせて変化していかないと生き残れな
いのではと考えています。
味噌にしてもお客様の声をお聞きしながら
減塩味噌を作ったり、美味しくて健康食で
もある甘酒にも力を入れていくるもりです。
十二代目のプレッシャーは、本当はもっと感
じた方が良いかもしれませんが(笑)、それは
あんまり無いですね。
自分はこの家を継ぎましたけれど、何が何で
も家を残すというより、自分の人生を全うでき
ればそれが一番良いのかと思います。
自分の子供たちにも家を継げと強要するつ
もりは今のところありません。

商売でも教育でも何でも、それぞれがクオリ
ティを上げていけばそれが佐渡の魅力とな
り、観光にも繋がっていくのではと思います。
それを人に言うには、まず自分のところがそ
うならなくてはいけませんよね(笑)。











お問い合わせ
塚本こうじ屋
〒952-0014 新潟県佐渡市両津湊303
TEL:0259-27-2769
FAX:0259-23-2199
Email:tsukamoto@misokouji.com
営業時間:8:00〜18:00 日曜定休





  

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