借りた金を返した古松
(金井町吉井)


吉井の国道相川線の地持院橋の西北の田圃の中に、一株の古松がある。
この株は、むかし、お伊勢まいりに行ったといわれている。
このころ、お伊勢まいりには、佐渡の人はかならず「三日市の太夫」の家に泊まることにしていた。
あるとき、一人の女が泊まって「わたしは、佐渡の吉井の地持院お松という者でございますが、路銀(ろぎん)=旅行費用)が不足してしまったので、恐れ入りますがお金を貸していただきとうございます。」と、たのんだ。
太夫は、気の毒におもって、いくらかの金を貸した。女はたいへんよろこんで「あなたが佐渡へおいでの節は、きっとお返しいたします」といって帰った。
翌年「三日市の太夫」は、毎年のように幣(ぬさ=神に奉納する物)を配るため佐渡へ渡って来た。そして、吉井で地持院お松という人がいるかといってさがしたが、どうしてもわからなかった。
村の人たちは、地持院橋のあたりに松が一株あるからといって、太夫といっしょに行って見ると、伊勢で貸しただけの金が、枝につるしてあった。

戻る