情報 2009年1月25日
エスライフ 09年2・3月号

イタリアから故郷を想うB

人との出会いというのは不思議だ。

人と会うというのはごく日常的なことだが、それがときに思いもよらない展開に発展していくこともある。

僕がこの原稿を書くようになったのだって、出会いによるものだ。

『ノブ』こと松久信幸氏が経営する日本レストラン「NOBU」は、

いまや世界各国で二十数店舗があり、世界的にも高い評価を受けている。

特にニューヨークの「NOBU NEW YORK」にはトム・クルーズやマドンナなどの有名人らも訪れるほどだ。





その「NOBU」で扱っている銘柄が、佐渡の赤泊にある「北雪酒造」の吟醸酒だ。

これは「北雪」の味を松久氏が気に入ったためで、もとはというと、

ロック歌手の矢沢永吉が「北雪」の酒を松久氏に土産として贈ったのがきっかけらしい。

俳優のロバート・デ・ニーロ氏も「北雪」の酒を気に入ったひとりで、何度か佐渡まで訪れたこともある。

そのデ・ニーロ氏は、松久氏の「NOBU NEW YORK」では共同経営者でもある。

そのいきさつというのがまた興味深い。「NOBU NEW YORK」の前身として、

松久氏はビバリーヒルズで日本レストランを開いていたことがあって、

その店の常連だったのがデ・ニーロ氏だ。

それが縁で、何年か後に、デ・ニーロ氏との二人三脚の「NOBU NEW YORK」が誕生することになる。

また、「NOBU NEW YORK」の顧客にファッション界の大物のジョージォ・アルマーニ氏の姿もあった。

そのアルマーニ氏からの依頼により、氏の店舗内での出店も実現した。

イタリアはミラノの高級ファッション通りの一等地である。

松久氏の料理人としての出発は、東京は新宿の寿司屋である。そこで修業した

後、アルゼンチンのブエノスアイレス、アメリカのロサンゼルスで自分の店を開き、

やがて「NOBU」は世界的な店舗展開が行われていく。

松久氏が辿った道を追ってゆくと、節目には誰かとの出会いが絡んでいるように見受けられる。

人との出会いは無限の可能性を秘めている。

けれども見逃していけないのは、氏の努力・情熱・才能で積み上げた「土台」が最初にあったからこそ、

その後の「人との出会い」が生きてくる結果になったということではなかろうか。

「北雪酒造」の味が「NOBU」で味わうことができるようになったのも、

まず「北雪」の確かな味が先にあったからこそ、ということを忘れてはいけないだろう。


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